南陽高に来春付属中 京都府南部初、中高一貫校に熱視線

 

南陽高(京都府木津川市兜台)は来年4月に付属中を併設し、府南部で初の公立中高一貫校となる。英語教育や海外留学といった「グローバル教育」と、関西文化学術研究都市の立地企業や研究機関との連携を一貫教育の柱に掲げており、保護者の関心も高い。一方で、近隣中学への影響や受験競争の過熱を懸念する声もある。


 府教育委員会は、2004年に洛北高(京都市左京区)、06年に園部高(南丹市)、15年に福知山高(福知山市)に付属中を開校した。府南部でも進路選択の公平性から検討を進め、昨年7月に木津川市、同9月に精華町からの要望を受け、南陽高への設置を決めた。


 南陽高付属中は定員40人の1クラス。中2で中学の学習内容を終え、中3から高校の内容を先取りして学ぶ。英語は時間数を増やし、中3で英検準2級以上の習得を目標とする。

 高校は、全員がサイエンスリサーチ科に進み、高1で3~4カ月の留学を奨励する。最終的に「TOEFL iBT」で米州立大に進学できるレベルとされる61点以上を目指す。

 高校受験がない「ゆとり」を生かし、中学からグループで探求学習に取り組む。学研都市の研究者による授業など、情報技術(IT)やライフサイエンスなどの分野で専門性の高い教育を進めるという。

 越野泰徳校長は「個性を多様に発揮し、新たな価値を生み出せる生徒を育てたい」と話す。

 南陽高付属中の通学圏は京都市を除く府内全域で、府南部の保護者の関心は高い。南陽高によると、これまで開いた4回の説明会に各回千~400人が参加し、6割が同高に近い木津川市、精華町、京田辺市からで、4割が宇治市などだった。

 10月21日の説明会に参加した城陽市の母親(42)は「私学のように多彩な教育が期待できそう。学研都市との関わりが魅力」といい、木津川市の母親(40)は「京都市内の私学も考えるが、費用や通学時間が気がかり。ここなら自転車でも通えるし安心」と話した。

 府教委高校教育課によると、木津川市や精華町は例年、地元の公立中へ進学せず、私学などに行く児童が1割を超え、府内でも多い地域という。京都市内のほか、通学しやすい奈良県や大阪府の国立や私立中に進学する児童も多いとみられる。公立中高一貫校の誕生で、他府県に流出していた児童が地元にとどまることも考えられる。

 一方で、懸念も出ている。精華町は町内3中学のうち、南陽高に最も近い精華南中は近年、生徒数の減少が続いている。2025年度には1年生が1クラスになる予想だが、南陽高付属中に生徒が流れればさらに早くクラスが減る。

 町は、適正な学校規模が維持されることを望む意見を府と府教委への設置要望書に盛り込み、過度な受験競争が生じないよう配慮も求めた。
 町教委は「詰め込むだけが教育ではない。子どもの人間教育やさまざまな活動が十分できなくなるのであれば良くない」と説明する。



2017.11.6
京都新聞から転載